うちの犬が大きい訳

 

うちには大きなコーギーがいる。とても立派なコーギーなのだ。
普通のは10キロ前後だが、うちのは15キロ近くある。

ある春のこと我が家にとって初めての犬がやってきた。
まだ子供でとても小さなかわいいコーギーだ。本当にかわいい。
ただ他のコーギーの子犬と比較すると体は小さく、食も細かった。
性格はやんちゃで、よく人の足にじゃれついてきた。
また髪の毛で遊ぶのが好きで、よくお袋の長髪はおもちゃになっていた。
ただ割りと寝ている時間の長い子だった。

散歩のときはとても困った。とにかく歩かないのだ。歩いてもすぐ止まってしまう。
強引に引っ張って連れていっていたが、まあ犬はこんなもんなのかなぐらいに考えていた。
動物病院の先生に相談すると、この子は自分がリーダーだと思っていますねと言われた。
ようするに、エサを食べないのも散歩で歩かないのもわがままだと。

その子を連れて家族で川に行った時、帰りの車でその子はずっと俺の膝に顔をのっけて寝ていた。
おじさん夫婦が家に犬を連れて遊びに来たとき、突然俺に吠えてきたおじさんちの犬に
うちの子は勇敢に立ち向かっていった。

その子がうちにきて三ヶ月ほど経ったころ、なんだか具合が悪いのかだんだん寝てる時間が
多くなりエサの食べなくなっていった。
きっと散歩で歩かないからこの子は腹が減らないんだ、と考えた俺とお袋はその子を
散歩に連れ出した。するとその日はなんだかよく歩いた。
でも翌日吐いてしまったので動物病院に連れて行くと、
病院で入院させましょう、という話になった。

その子を置いてうちに帰ってきて3時間ほどすると動物病院から電話がかかってきた。
電話に出たお袋は、話しているうちに号泣しだしてしまった。
どうやらただ事ではないことが俺にもすぐにわかった。
すぐに病院に来てくれということらしい。

吐き方がおかしかったので、先生が調べてみると、
どうやらもうその子は生きているのが不思議なほどの状態だったらしい。
完璧に腎臓がやられていた。入院させますがもう長くはないと言われた。
うちに帰ってくると誰ともいわず鶴を折り始めた。
その日夜どうしてもその子が気になって寝ずに鶴を折った。

二日後その子を安楽死させた。そうするに至った経緯はここには書かない。
亡くなったとき、その子はわずか4キロほどだった。

たぶんうちに来た時からもうかなり腎臓が悪かったんだろう。
食が細いのも、散歩で歩かないのもそのせいだったのだ。
結局最後になってしまった散歩だが、あれはきっとあの子ももう自分も運命を
わかっててきっと全体力を振り絞って歩いてくれたんだ。ほんとにありがとうな。

俺はどれだけ泣いたか分からない。何も考えなくても自然に涙が出てきた。
その子と過ごしたたった三ヶ月が、人生の中で大きな時間だったことに気付いた。

その後うちに新しいコーギーが来た。がっちりと大きくすこぶる健康だ。
うちの犬がこんなに大きく育った理由、それはきっと・・・・・・

もうあれから4年かぁ。
天国で今度はちゃんと走り回ってるかな。

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